今や生活必需品となっているエアコン。身近な存在でありながら、エアコンがどのようにお部屋を涼しくしたり、暖めているかをご存知でない方も多いと思います。

今回はエアコンの冷房と暖房の仕組みと冷媒ガス(歴史・役割・特徴等)についてご紹介します。

冷房と暖房の仕組み

冬場お風呂からよく体を拭かず、水滴のついたまま風にあたると非常に寒く感じますが、体をタオルでよく拭いてからお風呂から出ると、そんなに寒く感じないという経験をしたことはありませんか?

これは皮膚についている水滴が水蒸気という気体になる時に熱を皮膚から奪うため、このような現象が起こります。これと同じように、暑い夏に庭へ打水をすると涼しくなったり、むしむしする満員電車に乗って汗をかいた後、電車から降りて外の空気にあたると非常に涼しかったり、またアルコールを浸した綿で腕を拭いた時に冷たく感じるのも、水やアルコールという液体が蒸発して気体になる時に周囲から多量の熱を奪うからなのです。

冷房と暖房の仕組みを理解するためには、液体と気体の性質を知る必要があります。

液体と気体の性質

・液体が気体に変わる時(蒸発)、周囲の物体から熱を吸収する。蒸発温度が低く、且つ圧力が低いほど熱の吸収は大きい。
・気体が液体に変わる時(凝縮)、熱を放出する。圧力を高くして冷却すると凝縮しやすく、且つ放熱は大きい。

このようにエアコンは液体と気体の性質を利用してお部屋の温度調節を行っています。この性質を利用する際に欠かせないのが「冷媒ガス」です。

一般的に冷媒ガスと呼ばれていますが、「ガス」と言っても常に気体というわけではありません。エアコンの冷媒配管を循環する過程で液体や気体に変化し、その際に冷媒ガスは高温や低温になるため、この熱を利用して温度調節を行っています。

では実際どのように冷媒ガスが温度調節に関わっているかご説明します。

冷房運転の仕組み

冷房運転の仕組み
※注1…冷媒は冷媒ガスのことです。
※図はイメージです。

上の図のように、冷媒ガスはエアコンの室内機と室外機を結ぶ冷媒配管の中を循環しています。

冷房運転の場合、室外機の減圧器で低温の液体になった冷媒ガスは、室内機に運ばれて熱交換器を冷やします。この時、室内機ではファンで吸い込まれたお部屋の空気が、冷やされた熱交換器によって熱を奪われ、冷たくなった空気はファンで再びお部屋に放出されるため、室内機から冷たい風が出ていると感じるのです。

部屋の熱を吸収した気体の冷媒ガスは室外機に戻って圧縮器で高温の気体となります。その後、室外機の熱交換器を通過する際、ファンによって冷却されるため室外機の正面から暖かい空気が放出されます。夏場、室外機から暖かい風が出ているのは、冷媒ガスの熱が放出されているからなのです。

暖房運転の仕組み

暖房運転の仕組み
※注1…冷媒は冷媒ガスのことです。
※図はイメージです。

暖房運転の時は冷房運転の逆で、室外機から外の空気の熱を吸収し、圧縮器で高温の気体となった冷媒ガスが室内機に運ばれ、冷媒ガスの熱によって熱交換器が温められます。温められた熱交換器はファンによってお部屋に熱を放出します。これにより、室内機から暖かい風が出ているのです。また、お部屋の空気の熱は冷媒ガスによって室外機に送られ外へ放出されます。この熱の移動によって部屋の温度調節を行っているのです。
※暖房運転の時は室外機が外気の熱エネルギーを吸熱しているため、外気温度が低いほど暖房能力が低下します。

冷媒ガスの役割

前述の通り、冷媒ガスが空気中の熱を吸収したり放出することでお部屋の温度を上げたり下げたりしているため、冷媒ガスがなければエアコンは能力を発揮できません。

万が一冷媒ガスが漏れてしまい、十分な量が冷媒配管の中に入っていない場合は、熱の移動能力が低下し温度調節ができなくなってしまいます。お部屋が冷えない、もしくは暖かくならない場合は冷媒ガスが漏れている可能性があります。また、エアコンの移設を何度も行うと冷媒ガスが漏れてしまうため、作業員が確認した上で足りない場合はお客様へご案内させていただきます。

冷媒ガスの歴史

時代の変化と共に様々な種類の冷媒ガスが開発されてきました。

2000年以前のエアコン製品には(指定フロン)R22の冷媒ガスが使用されていました。R22は大気へ放出するとオゾン層を破壊し地球環境へ悪影響を及ぼしてしまうため、2000年以降から各メーカーで(代替フロン)R410AやR407Cの製品が発売されました。

R410A はオゾン層への影響はありませんが、大気へ放出してしまうと地球温暖化に影響を及ぼしてしまいます。そのため、R410Aよりも地球温暖化の影響が少ないガスとして(代替フロン)R32を採用した製品が開発されました。

2012年秋ごろにダイキンよりR32の冷媒ガスを使用した製品が発売され、現在は主にR410AとR32の冷媒ガスを使用したエアコンが多く製造されています。

※旧冷媒R22は2020年に全廃される予定です。

冷媒ガスの種類と特徴

冷媒ガスは種類によって性質や工事内容が異なります。新冷媒R32は単一冷媒のため、足りない量だけを追加する「ガス補充」が可能ですが、R410Aは二種混合冷媒で、補充では組織バランスが崩れるため、ガス不足の場合はガスの入れ替え作業である「ガスチャージ」が必要になります。ガス補充とガスチャージではガスの使用量が違うため料金が異なります。

冷媒ガスの種類 R22 R410A R32
冷媒ガスの特徴 単一冷媒 二種混合冷媒
(R32+R125)
単一冷媒
工事名 ガスチャージ ガスチャージ ガスチャージ
ガス補充 ガス補充

※ガス補充:冷媒ガスが規定量に達していない場合に補充する作業です。
※ガスチャージ:冷媒ガスが全く入ってない場合に冷媒ガスを全量注入する作業です。真空引き作業を行った後に冷媒ガスを規定量注入します。

お客様のエアコンがどの冷媒ガスを使用しているか確認する場合は、室外機の正面もしくは側面をご確認下さい。メーカーによって位置は異なりますが、冷媒ガスの種類が記載されたシールが貼られています。また、冷媒ガスが必要な場合は現場で作業員が確認し、「ガス補充」もしくは「ガスチャージ」になるかを判断しご案内させていただきます。

まとめ

エアコンは冷媒配管の中を通る冷媒ガスを液体や気体に変化させることにより、お部屋の熱を吸収・放出して温度調節を行っています。また、温度調節を行うために冷媒ガスが必要になり、冷媒ガスが不足しているとエアコンの温度調節が出来なくなる可能性があります。

エアコンの基本的な仕組みは変わっていませんが、冷媒ガスは地球環境に配慮して、より環境への影響が少ない性質に切り替わってきました。これからも、地球環境やエアコンの性能に合わせて、我々もエアコン工事に携わる者として、新しい情報を素早く取り入れ、進化していくエアコンに対応していきたいと考えています。